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女性とともに -Hacer-

日本社会の中の家族そして私たちの現場から見えてくること

2017年6月22日 | CATEGORY - 女性とともに

 

13-07-10 大阪・海遊館

麹町イグナチオ教会とイエズス会社会司牧センターが共催している、教皇フランシスコの使徒的勧告「Amoris Laetitia」をテーマにしているセミナーに参加しました。

 

教皇はどんな家庭もいつも完全で型通りのものではなく、家庭は、愛を発展させていく場だと述べています。そして「家庭よ、歩み続けましょう、希望を失ってはなりません」と呼びかけています。(「家庭における愛」チラシより抜粋)

 

今回は「家族をめぐる日本社会・政治状況~仕事と家族、子どもの教育~」というタイトルで上智大学の三浦まり先生がお話をしてくださいました。

 

ここ15年くらい国家は家族に期待し続けています。昨今、少子高齢化・人口減少社会到来・晩婚・非婚の進展・女性の労働とケア労働の行方・ジェンダー平等へのバックラッシュ・新自由主義的グローバル競争と教育への投資・軍事化と女性の役割等が政治の争点となっています。

 

日本の人口は終戦(1945)に7199万人だったものが2010年までに1億2800万人にまで上り詰め、現在は急激に減少が始まっており2050年には9700万人(高齢化率38.8%)にまでに推移すると予想されています。(国土交通省の統計より)

 

日本の合計特殊出生率は1950年に3.5を上回っていましたが、優生保護法などにより産児制限によってどんどん数字は下がり、1990年代には1966年の丙午の1.58を下回り2005年に最低の1.26まで落ち込みました。(厚生労働省「人口動態統計平成26年」より)先進国の中では英米仏などは国の政策によって人口維持可能な2.07まで持ち直していますが、日伊独は1.4前後が続いています。

 

少子化問題も社会政策、特に男女の働き方と密接な関係がある。男性稼ぎ主モデルから少子化、人口減少、ジェンダー不平等、格差の広がりの中、共稼ぎモデルへとモデルチェンジできるかが大きな課題である。そのために保育園の整備(大都市圏)や長時間労働の是正、女性のキャリア展望(性差別の無い人事評価)の具体的政策が重要となってくる。

 

しかしながら現政権において具体的にやろうとしているのは①家事労働の移民労働者への門戸拡大(短期)(←しかしながら言葉や習慣の違いや密室での労働となるため移民老奏者の人権への配慮が急務)と②婚活支援(←本当は賃金の問題なのにそこには手を付けない)現実は同一価値労働同一賃金には踏み込まず、待機児童も解決せず、男性の育休も進まず、労働者派遣法の緩和により、生涯派遣の可能性が拡大し、雇止めも発生している。最低賃金への介入をするが実質的には賃金は下がっている。

 

現政権の「Shine! ~すべての女性が、輝く日本へ~」といったブログのタイトルが「Shine!」の部分を「死ね」と読めてしまうお粗末さ。

 

家族に対する予算をGDP比の割合で出して他の先進国と比較すると2011年の統計では日本は1.36%、米は0.72%でそれよりはだいぶ高いが英は3.78%、スウェーデンは3.46%となっている。

 

ジェンダー規範の作用として

性別役割規範(母親・無償ケア労働)→・マミートラック(責任のないキャリアを積めない部署や仕事へ配属される)・ケア労働の低賃金化・シングルマザーへの懲罰

ステレオ・タイプ 女性の男性職への参入障壁・能力評価のバイアス(できる女=嫌われる)

性差別 悪意ある性差別→女性を性的に搾取、消費・好意的な性差別→「女らしい女性を礼賛し保護。自立の可能性のある女性も内面化。

支配的な男性の問題 降りることが出来ない男性・高い自殺率・セクハラ・パワハラ

 

中でもシングルマザーの貧困は深刻である。

 

そんな中、国家家族主義が台頭してきている。つまり家族は国家に奉仕し犠牲を払うものであり、国家の負担になってはいけない。国家は家族の在り方を統制する。(婚姻、異性婚、永続性、同姓)そのための解決策として・婚活支援・「産む」事の奨励・少子化対策基本法・母親の犠牲の称賛・生活保護における家族扶養義務・三世代同居の奨励・性的自律性への攻撃・性教育批判・ジェンダー・ステレオタイプの維持etc

 

少子化対策基本法(2003)では国民の責務として「国民は、家庭や子育てに夢を持ち、かつ、安心して子どもを産み、育てることが出来る社会の実現に資するよう努める。」とあり17条に「国及び地方公共団体は生命の尊厳並びに子育てにおいて家庭が果たす役割及び家庭生活における男女の協力の重要性について国民の認識を深めるよう必要な教育及び啓発を行うものとする。」とある。一見善いことが書いてあるようだが、女性の性的自己決定(リプロダクティブ・ライツ/ヘルス)の後退となっている。

 

又争点となっている24条の改正案として

 

<自民党会憲草案>には「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」という文言が付与され、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立し」の「のみ」が削除されるなど、国家の責任を免れ、自己責任を強調し、戦前の家父長制的な風潮へ戻ろうとしている。

 

新自由主義と軍事化によって富と権力が集中し、競争が激化し、保育園での死亡事故の数の多さと15歳から35歳までの死因の1位が自殺という、先進国としてもとても悲惨な国となってしまっている。又経済や集団的自衛権の問題で軍事化が進みその犠牲を再び女性におわせようとする脚本が出来つつある。

 

この様な家族をめぐる日本社会・政治状況へフランシスコ教皇の「Amoris Laetitia」は何に気づかせてくれるのだろう。

 

私たちの福祉の現場にはたくさんの虐待を受けた女性たちがこられる。児童相談所への虐待相談件数は平成26年度8.9万件で相談内容の1位は心理的虐待(児童に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応など)で主な虐待者の52%が実母35%が実父となっている。(厚生労働省「平成26年度福祉行政報告書」)私たちが出会う方々も同様である。「輝く女性」「女性の権利」「助け合う家族」といったスローガンが色あせてしまうほどに、現場で出会う虐待を受けた女性たちの傷は深い。そして癒される目途がなかなか立たない将来とそれでも日常を普通に生きていかないといけない現実に気が遠くなる。

 

以前地方のシェルターで出会った20歳の女性は母親からずっと性的虐待を受けていたという。又「あなたの父親は飼っていた犬」といわれ続け、出会ったときには10人以上の人格を持っておられた。外見は魅力的な方で、言葉にもウイットがあり教養が感じられる。ちょっと見た感じでは彼女の苦しみは解らず、また知識においては負けてしまうかもしれないほどのギャップがあった。乖離性同一性障害の方は出会って瞬時に空気を読み、相手に気にいられるように振る舞ってしまうという。小さいころから虐待を避けるために家の中で乖離を繰り返してきたから。自分である事を受け入れられたことが無いという状態でしょうか。これらはすべて内面で起こることなので誰からもわからないことが多い。それ故に本人の苦しみはさらに強い。医学的、心理学的な治療を専門家から受けながら、私たちはひたすら生活を共にする。一緒に掃除をし、食事をし、時にはパーティーのために料理をしたり、おしゃべりをしたり…。彼女たちの霊的な痛みを分かち合ってもらったり、私たちの経験を伝えたりする。焼け石に水の様だが、ひと時の笑顔にみんなで安堵する。先輩の聖マリア・ミカエラも「今日一日だけでも彼女が苦しみに巻き込まれなければいい…」と言っているから。

 

今日もこのミサと祈りを通して、希望を失わずに歩み続けることができる。

 

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